2013年 08月 29日
一時帰国中に読んだ本、映画その2、田辺聖子+群ようこ |
○田辺聖子、短編何冊か
田辺聖子さんは膨大な数の著書があるので、ちょくちょく読んでいるものの、
一体どれくらいの割合読めているのか、まったくわからない。
今回も短編集を何冊か手にとったのだけれども、どの作品を読んでも、
毎回彼女があれだけいろんな種類の人間を丁寧に描けることに、
びっくりしてしまう。
恋愛小説ももちろん天下一品だけれども、たとえば中年の男性の視点で
彼らの妻を描いた作品なんかも、男性の諦観と共に深い溜め息まで
聞こえてきそうで、とっても味わい深い。
田辺さんの小説を読んでいると人間って奥が深くて面白いなあと、
わくわくするような気持ちになる。
私も田辺さんのように、そういう深みを味わえる人間になりたいなあと
しみじみ思う。
○群ようこ、長編、短編何冊か
群ようこも昔から大好きな作家で、かなりの作品数を読んできていると思う。
今回特に面白かったのは『ヒガシくんのタタカイ』という小説。
ヒガシくんは広告会社を営む父と美しい母を持つ、裕福な家庭の一人息子。
ヒガシくんが小学校高学年のとき、突然母がデザインの勉強のため
フランスに留学したいと言い始め母がいない生活が始まったかと思うと、
なんと母は留学予定時期を過ぎても日本に戻ってこず、
フランス出会った男性と結婚するため父と離婚してしまう。
その後、父とふたりの生活に慣れてきた矢先、今度は父が再婚することになる。
ヒガシくんはどこまでも大人の都合で自分の生活を乱され、
その度毎に静かに溜め息をつきながらも、なんとか折り合いをつけようとする。
そう、息子を見ていても時々感じるのだけれど、子供って大人の庇護の下にある
安心感はたしかにあるけれども、自らの自由な選択がほとんどできず、
親の都合でほとんどすべてのことが決定され、とっても不自由だなと思う。
だったら、責任を負ってでも、選択肢を持てたほうがずっといい。
誰かに選択肢を握られた人生なんて、窮屈だなと思う。
もちろん自由な状態を知らない子供はその不自由さを感じることもないだろうし、
そもそも選択できるほど育っていないからこそ庇護下に置かれている
わけだけれども。
でもそう考えると、子育てはやっぱり、自分で選択できるようになるために、
自立の準備を整える手伝いをすることなんだな、とこれまた改めて思う。
もうひとつは、ヒガシくんのクールさというか、親への距離感。
たとえば、自分を捨てた母親と子供というある種定番の形であっても、
ヒガシくんはとってもクール。中学生になった自分にこっそり会いにきた
母親に対しても、冷たいわけではないけれども、「いまさら母親って
言われても」という戸惑いやちょっと迷惑ささえ感じている。
もちろんこれは作り話だし、実際にその立場に置かれたこともないから
そういうシチュエーションで子が母にどういう感情を抱くかっていうのは
わかりようもないんだけれども、ヒガシくんほどクールでなくとも、
みながみなドラマのように「私を捨てたくせに!」と愛憎混じった
激しく複雑な感情を抱くわけでもないんじゃなかろうかって思う。
もっと丁寧にいうと、このヒガシくんのクールっぷりを見たときに
改めて感じたのは、子供って親が思うほど(というかむしろ願うほど?)、
親を必要としていないんじゃないかというか、そういう時期は
親の想定よりずっと短いんじゃないかなあと思う。
ドラマなんかだと、親の無関心が子供を傷つけるパターンばっかり
目にするけれども、実際には、もっと関心を薄めて欲しいのに、
もっと距離をあけてほしいのに、親のほうがにじり寄りすぎな
親子のほうがずっと多いんじゃないかなあ。
個人的に子に依存する親(しかも自分がしたくてそうしているのに
それを認めず「子供のため」っていう大義名分を振りかざしながら)
っていう存在に抵抗感が強いので、そういう穿った見方をしちゃうのかも
しれないけど。。
そんなわけでクールなヒガシくんの生き様は私にはとても清々しく、
気持ちよく読めた一冊だった。
その他印象的だったのは、いろんなタイプのオヤジを描いた短編集。
ユーモラスで時に図々しく時に哀切漂う、愛すべきオヤジたちが
なんとも面白くて、ときどき声に出して大笑いしてしまった。
こういう、肩の力が抜けた、ふにゃっとしていて、かつじんわり
面白くて、思わずにやにやしてしまうような群ようこ節がとっても好き。
田辺聖子さんは膨大な数の著書があるので、ちょくちょく読んでいるものの、
一体どれくらいの割合読めているのか、まったくわからない。
今回も短編集を何冊か手にとったのだけれども、どの作品を読んでも、
毎回彼女があれだけいろんな種類の人間を丁寧に描けることに、
びっくりしてしまう。
恋愛小説ももちろん天下一品だけれども、たとえば中年の男性の視点で
彼らの妻を描いた作品なんかも、男性の諦観と共に深い溜め息まで
聞こえてきそうで、とっても味わい深い。
田辺さんの小説を読んでいると人間って奥が深くて面白いなあと、
わくわくするような気持ちになる。
私も田辺さんのように、そういう深みを味わえる人間になりたいなあと
しみじみ思う。
○群ようこ、長編、短編何冊か
群ようこも昔から大好きな作家で、かなりの作品数を読んできていると思う。
今回特に面白かったのは『ヒガシくんのタタカイ』という小説。
ヒガシくんは広告会社を営む父と美しい母を持つ、裕福な家庭の一人息子。
ヒガシくんが小学校高学年のとき、突然母がデザインの勉強のため
フランスに留学したいと言い始め母がいない生活が始まったかと思うと、
なんと母は留学予定時期を過ぎても日本に戻ってこず、
フランス出会った男性と結婚するため父と離婚してしまう。
その後、父とふたりの生活に慣れてきた矢先、今度は父が再婚することになる。
ヒガシくんはどこまでも大人の都合で自分の生活を乱され、
その度毎に静かに溜め息をつきながらも、なんとか折り合いをつけようとする。
そう、息子を見ていても時々感じるのだけれど、子供って大人の庇護の下にある
安心感はたしかにあるけれども、自らの自由な選択がほとんどできず、
親の都合でほとんどすべてのことが決定され、とっても不自由だなと思う。
だったら、責任を負ってでも、選択肢を持てたほうがずっといい。
誰かに選択肢を握られた人生なんて、窮屈だなと思う。
もちろん自由な状態を知らない子供はその不自由さを感じることもないだろうし、
そもそも選択できるほど育っていないからこそ庇護下に置かれている
わけだけれども。
でもそう考えると、子育てはやっぱり、自分で選択できるようになるために、
自立の準備を整える手伝いをすることなんだな、とこれまた改めて思う。
もうひとつは、ヒガシくんのクールさというか、親への距離感。
たとえば、自分を捨てた母親と子供というある種定番の形であっても、
ヒガシくんはとってもクール。中学生になった自分にこっそり会いにきた
母親に対しても、冷たいわけではないけれども、「いまさら母親って
言われても」という戸惑いやちょっと迷惑ささえ感じている。
もちろんこれは作り話だし、実際にその立場に置かれたこともないから
そういうシチュエーションで子が母にどういう感情を抱くかっていうのは
わかりようもないんだけれども、ヒガシくんほどクールでなくとも、
みながみなドラマのように「私を捨てたくせに!」と愛憎混じった
激しく複雑な感情を抱くわけでもないんじゃなかろうかって思う。
もっと丁寧にいうと、このヒガシくんのクールっぷりを見たときに
改めて感じたのは、子供って親が思うほど(というかむしろ願うほど?)、
親を必要としていないんじゃないかというか、そういう時期は
親の想定よりずっと短いんじゃないかなあと思う。
ドラマなんかだと、親の無関心が子供を傷つけるパターンばっかり
目にするけれども、実際には、もっと関心を薄めて欲しいのに、
もっと距離をあけてほしいのに、親のほうがにじり寄りすぎな
親子のほうがずっと多いんじゃないかなあ。
個人的に子に依存する親(しかも自分がしたくてそうしているのに
それを認めず「子供のため」っていう大義名分を振りかざしながら)
っていう存在に抵抗感が強いので、そういう穿った見方をしちゃうのかも
しれないけど。。
そんなわけでクールなヒガシくんの生き様は私にはとても清々しく、
気持ちよく読めた一冊だった。
その他印象的だったのは、いろんなタイプのオヤジを描いた短編集。
ユーモラスで時に図々しく時に哀切漂う、愛すべきオヤジたちが
なんとも面白くて、ときどき声に出して大笑いしてしまった。
こういう、肩の力が抜けた、ふにゃっとしていて、かつじんわり
面白くて、思わずにやにやしてしまうような群ようこ節がとっても好き。
by moriyumi0721
| 2013-08-29 21:28
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